加藤唐九郎

加藤唐九郎

かとう とうくろう【生年】1897~1985

少年時代より家業の製陶に従事する。
また、瀬戸周辺の古窯発掘調査を行い、1929年瀬戸古窯調査保存会を設立する。
桃山時代などの古窯・茶陶に着目して、黄瀬戸、志野、織部、唐津、信楽、高麗茶碗などの伝統的な陶芸の復元や創作に取り組む。
1953年織部の陶技で無形文化財となった。しかし1960年に「永仁の壺事件」が起こり、すべての公職を捨てた。
以来、逆に独創的でエネルギッシュな制作に目覚め、伝統の枠にとどまらない独自の作陶を精力的に展開していった。
波乱に満ちた人生やさまざまな逸話とともに、人間味あふれる作風は、陶芸の世界に新しい息吹を与えた。

加藤唐九郎 作品


黄瀬戸鉢

黄瀬戸鉢

【制作年】1982(昭和57)年
【寸法(cm)】高10.3 口径31.0cm

解説
1982年5月の作である。この年5月17日から東京で「唐九郎の世界」展が日本経済新聞社の主催で催されたが、その時にこの鉢と同様の作振りのものが初めて出品された。
作者に聞いたところでは10点ほど同様のものを窯詰めしたとのことであるから、この鉢もその一つであろう。
私はこの手の黄瀬戸の鉢は唐九郎生涯の代表作として高く評価している。
桃山の黄瀬戸の再現に永年取組んできた作者が、桃山の心を内に体しつつ自由なこころで黄瀬戸輪花鉢に挑んだもので、ここでは桃山の黄瀬戸に対する拘泥は念頭になく、独自の風を求めて力強く奔放に輪花の大鉢をイメージして成功している。(林屋晴三)
(駒形十吉(編)『加藤唐九郎』長岡:駒形十吉記念美術館、1994年)

黒織部茶碗 銘 がらしや

【制作年】1950(昭和25)年
【寸法(cm)】高8.8 口径11.0cm

解説
高台を低く削り出した筒形茶碗の姿は、桃山時代前期の瀬戸黒茶碗の形を倣っている。
しかし胴には十字クルスと円窓の文様が白抜きで表わされているので、文様のある黒茶碗を黒織部と称する慣習に従えば蓋表の自署には「織部黒茶碗」とあるが黒織部と称すべきであろう。
桃山時代には、この種の作行きの茶碗にこのような文様を表わしたものはまったくない。
したがって作者は、瀬戸黒の形を倣いつつ独自の作風をここに示して、唐九郎黒茶碗の代表作の一つに挙げられるものを生み出したといえる。
確かな形姿に大胆な文様を描いた奔放な作為はいかにも野の陶人唐九郎らしい。守山の窖窯で焼かれたものらしいが、箱書付は後年の自署である。(林屋晴三)
(駒形十吉(編)『加藤唐九郎』長岡:駒形十吉記念美術館、1994年)

PAGE TOP